尿路結石とは、腎・尿管・膀胱にできた石です。
腎臓や膀胱の石は、人類始まって以来人々を悩まし続けています。其の証拠に、紀元前4000年も昔のエジプトのミイラの腎臓や膀胱に時々立派な結石が発見されます。そして、驚くことに、紀元前すでに痛みや血尿などから、あるいは金属の棒を尿道からいれて石に当たる手ごたえで膀胱結石を診断して、外科的手術をしていたようです。
麻酔も無く、抗生剤も無い時ですからどのような事態が起こっていたのか想像できると思います。手術に伴う痛みと傷から感染を起こして腹膜炎を併発していたでしょう。
聖医といわれていたヒポクラテスの誓いのなかに『膀胱結石の砕石術は、その道の職人に任せ、我々は一切関係しない。』とあります。
野蛮で合併症の多い砕石術は、当時教養ある正しい医師団と自負していた医師たちの行うべきものではないとしたのです。実際、手術を行ったのは、膀胱結石に対する砕石術を家秘伝の技としてもつ職人たちでした。
最近、尿路結石は、発生率がウナギ登りに増え、戦前の約3倍になっております。また、一度尿路結石になった人は、5年以内に20〜50%の高率で再発を繰り返します。豊かな食事、社会的ストレスなどが結石を出来やすくすると考えられており“文明病”の一つとして考えられております。とくに、尿路結石になる人は、働きざかりの男の人に多く、家庭でも社会的にも、非常に損失が大きいと思われます。そこで、最近食事療法の重要性が注目されて来ていますが、注意すべきことを3点お話ししたいと思います。
第一に、カルシウムは制限すべきか。
日本人は、西欧人に比べて、カルシウムの摂取量が少ないのでいちがいにカルシウムを制限すべきではないと思われます。しかし、動物性蛋白質の多量 摂取は、尿中カルシウム排泄を増加させ、結石形成の阻止因子であるクェン酸排泄を著しく低下させます。 もう1つの問題は、野菜不足です。結石阻止に働くマグネシウムや繊維が、尿路結石の患者さんでは不足がちです。 『結石の患者さんには、肉好きの野菜嫌いが多い』
第2に、水を多く飲もう!
健常人の平均摂取量の倍にあたる1日2,000〜3,000mIの水分摂取が目安です。 水分の摂取により、尿中排泄物の濃度を抑え、そのために結石形成を抑えると考えられます。 『食事以外にコップ6杯以上の水を飲もう』 紅茶や高級緑茶は、結石の成分となるシュウ酸を含むので、番茶や麦茶の方が良いのです。
第3に、結石は夜作られる
遅い時間に夕食を摂る人、夕食中心に多食をしている人には、結石の患者さんが多いです。就寝中は水分の補給がなく、尿中のカルシウムが高くなる一方で、体を動かさないでいますので、一層結石が形成されやすいと言われています。 『夕食は多食せず、三食バランスよく食べること。また、就寝まで4時間以上あること』
しかし、結石の発生機序は原因の不明なものが大半を占めますが、尿の停滞‘感染(腎盂腎炎・膀胱炎)・内科的疾患(副甲状腺機能亢進症・痛風)などの原因をしっかりと究明する必要があると思います。そして、基礎疾患を治療することが結石予防となります。もし、あなたが尿路結石で自然排石しましたら、一度その石を持参してください。赤外線分析をして結石の種類を確認して、その人にあった食事指導をしたいと思います。 |